ブルドーザーの涙

日々の仕事の中で色々な方と接します。私が一日にガチで接する人間のほぼ90%は全く知らない人たち。でもカスタマーサービスの名の下にかなりディープなふれあいにあることもしばしば。

数日前にお電話で接してたお客さま、大丈夫かなぁ〜。

電話口に出られた彼女の印象はブルドーザー。声がトゲトゲして周りを全て破壊するような迫力がありました。アメリカの某所からカナダ東部までこの日程でチケットを手配したい...と言った内容のお電話です。こういう時、私は声の音量を少し落とし、ゆっくりと、訊かれたことに対する事実のみを話し、それ以上のプラスαインフォメーションはお話ししません。

彼女の後ろではテレビが鳴ってて、子供が騒いでいて、その子たちを静かにするよう怒り飛ばしながらの電話での会話で、彼女のイライラ感が電話でも伝わってきていました。

長い話しを短縮すると、彼女は病床にいてきっと余命が少ないであろうお姉さんか妹のところに、アメリカに住むこれまたガンを患っているもう一人の姉妹と駆けつけようとしていたのでした。彼女自身は私が彼女と会話をした日の翌日のほぼ真夜中の便で行くことにしたけれど、アメリカの片田舎に住む彼女のお姉さんか妹のフライトのアレンジが出来なくてパニックとせっぱつまった状況だったのです。

Are you all right?  大丈夫?

WHAT!  なんですって!(神経逆なでされて怒ったような声)

Are YOU all right?  あなたは大丈夫?



長い1秒くらいの間があって、いきなり彼女がむせび泣きだしました。涙をしゃくり上げながら彼女がとぎれとぎれに声を絞りだして、言いました。

「たずねて...くれて...ありがとう。」


大切な人を亡くすのは悲しい。

悲しみにかきくれられる時は幸いだと思う。 

だけど、悲しむ余裕さえ無く不安におののくことも自分に許さず、自分では気づいていなくても諸々の現実と戦っていかないといけない状況に自分を置いちゃうことってあるんだよね。

彼女はきっと必死で姉妹達のことを思ってがんばって、お母さん業もこなして...、きっとそんなんだと思うのです。

「何が出来るか調べたいので時間を下さい。」そう彼女に伝えてコンピューターの画面に向かったけれど、私もちょっとウルっとなった。今はここに居ない私の大切な人たちのことや、私がブルドーザーの時にそっと肩を貸してくれた優しい人たちが頭の中をよぎった。


おかげさまで、彼女のニーズに応えうる解決策を見つけ出し、いくつかのアドバイスを伝え、私と彼女の会話は終わった。 電話を切る時の彼女はもうブルドーザーじゃあなかったです。

ちょっとこの話し、みんなとシェアしたかったの。

それだけ。
おしまーい。